キラキラあなたが眩しくて

また会ってください

彼の演技を見て〜舞台「MORSE-モールス-」〜

MORSEを観てきた。

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私はオスカー役の小瀧望の事が苦手だった。嫌いではないけど何となく好きになれない。それは彼の振る舞いが気に食わなかったからだ。コンサートでは以前から可愛い子にしかファンサしない、こちらがイケメン好きなのと同じように可愛い子が好きであってもおかしくないのだが、お金を払って見に来ているのにどうなのだろう、彼のことを好きな気持ちは皆一緒なのに、と思った。リトル東京ライフのバイトの回では片方のチームの勤務開始時間が自分たちより遥かに遅いと知って怒っていたが、それも本気で怒っているように見えて、悲しかった。確かにバイトの内容は辛いのだが、もうちょっと怒り方を考えたらと思った。

彼に苦手意識を持ったままMORSEを観に行ったが、予想以上に彼の演技に飲まれそうになった。いや飲まれた。長身でどう見ても12歳の少年に見えない彼が、喋り方と表情で見事に12歳になってみせたからだ。完璧だった。特に表情の演技がすごくて、ヨンニに「砂、食えよ」と言われて砂を食べる直前に口元をピクッとさせた。私にはそれが最後のわずかな抵抗に見えた。砂を食べるシーンはもちろんエアーなのだが、むせ方も凄まじくて本当に砂を食べたのかと錯覚しそうになった。

お父さんの所に行って一緒にいたいとお願いする時の期待たっぷりの表情。オスカーはお父さんが一緒にいてくれると信じて疑わない。純粋な少年の顔で彼は椅子に座っていた。

駄菓子屋さんにいって店主のおじさんに「サルに似てるね」と言ったのもエリとの楽しい思い出に浸りたかっただけなのに、おじさんは怒り2度と来るなと言う。オスカーが泣いてるのを見て私も泣いた。知らず知らずのうちにオスカーに感情移入して観ていた。

潜水シーンの前、インミのカウントダウン中、大きく息を吐いた。オスカーが覚悟を決めた。目をつぶって両の手を握って静かに座っているオスカーを見て私が苦しくなった。もちろん彼が死なないことも、エリが1分経ったら助けに来てくれることも分かっていたが、見ていられなかった。最後の方、口元に手を当てたのを見て演技なのか本当に苦しんでいるのかわからなくなった。苦しくて辛くて目を背けたかったが、彼が練習してきたいわば見せ場の場面だと思うから視線を外すことはできなかった。今までで一番長い1分だった。

ここまで見ている人を物語の世界に引きずりこむ彼はすごいと純粋に思った。彼はどんな気持ちでオスカーを演じてきたのだろう。毎年、舞台に一緒に立ってきたメンバーは観に来ることは出来ても演技は出来ない。内容が内容なだけに休憩時間は明るくいようと思ってたらオスカーのままでいて、と言われたらしい。初座長で心細くはなかっただろうか。

2回目のカーテンコール。出てきた彼の表情はもう小瀧望に戻っていた。三方礼では客席の下から上までしっかり見ていた。

私の思っていた姿と全然違う小瀧望東京グローブ座にはいて、その演技の凄さに圧倒された。MORSEを観終わった時、彼に抱いていた苦手意識は消え去っていた。